研究概要 |
平成20年からアジア諸国の経済発展に対する日本の「人的資源育成」援助の貢献について、スリランカを中心に資料・聞取り・アンケート調査を同国ペラデニヤ大学(佐賀大学の協定大学)と協同で実施している。初年に、調査結果のマクロレベル分析を学術論文として、佐賀大学国際シムポジウム「アジア諸国の経済発展と人的資源育成~日本の協力の回顧と展望」(平成20年29日開催)で発表した。平成21年には、スリランカの帰国学生と研修生(文部省、JICA,AOTSの150人)および現在日本の大学で勉強する留学生(200人)から聞取り・アンケート調査を実施した。研究成果は3つの学術論文として纏めている(研究発表参考)。現在、アンケート調査結果をミクロレベルで分析し、学術論文として纏める計画である。 日本は1960年から2007年まで、スリランカに累計1,927億米ドルを政府開発援助として提供し、その7割が無償援助であった。膨大な無償援助の3分の1が技術援助であり、同国人的資源育成に利用されている。また、過去50年で日本の大学受入れの留学生とAOTS受入れの研修生の中で、スリランカ人が占めた割合はそれぞれ約1%と2%である。同国人口を鑑みると、日本の人的資源育成援助のプレゼンスは大きい。 日本の人的資源育成の積極的・消極的要因を次にあげる。積極的要因として、日本の教育・研修の社会的価値観、いわゆる日本人社会に見られる勤勉性、仕事に対する義務感、忠誠心、相互理解、協力性、責任感、礼儀正しさ、柔軟性、人助けと親切心、無差別性と、および教育と研修の実理性が、帰国後の職場における成功に大変貢献していること。消極的要因として、専門を深く教える制度が不足しており、成績評価方法があいまいであり、教育に関する規則(入学や成績評価など)が一般化されていない点が指摘できる。本年度は、過去2年間の調査で残された課題と問題点に関して、現地での具体的な調査を実施し、最終報告書を作成する。
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