平成21年度は、研究計画に則り(1)沖縄ツーリズムIO(産業連関表)、(2)沖縄ツーリズムSAM(社会会計行列)、(3)ツーリズムCGE(応用一般均衡)、の各ベース・モデルを作成しました。それぞれのモデルはまた、先行研究と異なりツーリズムを単一の独立した産業部門として分離しました。これにより、従来ツーリズム需要の波及効果の分析だけではなく、産業構造上の分析が可能になりました。具体的には、中間投入部分が未分離の従来の分析と異なり、本研究ではRAS法を用いツーリズムの原材料取引、すなわち中間投入の分離を完遂しました。本年度は、これにより「影響力・感応度分析」を行い、沖縄県のツーリズムの伸張が、必ずしも地域他産業の伸張に寄与しない可能性、また域内他産業の伸張がツーリズムの伸張を誘引しない可能性が高いことを検証しました。前者の背景には域外からの入域客が、その主な顧客であることから、ある程度致し方ないかもしれません。しかし、それにしてもツーリズム・サービスの供給のための原材料取引を喚起したり、後者に対してはさらなる「地産池消」を進めることが、地域振興を目的にツーリズム振興を図る場合必要であることを、この結果は物語っています。本稿で用いた手法は、偶然ですが、ハワイの研究者の間でも類似の手法を用いているが、一方で、そのベースとなるIOの産出がプロダクト・ミックスであることから、疑問も寄せられました。よって、平成22年度は計画に則り、同モデルの環境分析モデル化などを図ると同時に、各産業の総需要に占めるツーリズム需要の比率による「按分法」による分離も試みたいと思います。平成22年度には、当初の計画に加え、沖縄ツーリズムで問題となっている離職率の高さなどを、行動分析に基づいたリサーチを試みる予定です。平成21年度末には、本調査の設計に活かすため地元の調査機関の協力を得て、その予備調査を行いました。
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