世界の開発援助支出の最も詳細なパネルデータセットであるCRSデータと比較するためにも、DACの受入国分類(LLDC、LDC、MDCなど)に注目した。受入国の経済発展に応じて援助の条件が厳しくなるのは当然であり、LLDCはその発展が遅れているので、受け取るODAは贈与か低利子の借款となっている。DAC Annual Reportでは1年前の世界銀行が発表しているリストに基づいて分類しているようである。ただし、1人当たりGNIの基準が年度により変化しているため、リストは予想以上に不安定になった。拠出・受入の両サイドからの国際社会における政治的・経済的影響によるのかもしれないが、このリストによる援助配分の分析はかなり難しくなった。また、新興援助拠出国の援助データソースを探索した。OECDメンバーであり、最近DACにも加盟した韓国は全体として極めて小額にも関わらず、DAC基準のODAデータが公開されているようである。ただし、BRICS諸国はODAデータとして公開されているものが極端に少なく、かつ、DAC標準でもないため、国際的に比較できるパネルデータを構築するにはかなり困難が予想される。三菱総合研究所によるプロジェクトベースのデータを基にした報告書によると、中国、インド、ブラジルの海外への資金協力は、国際的なODA基準には当てはまらないけれども、少なくとも巨額であることが示された。また、JBICによる報告書によると、韓国をはじめとして、マレーシアやタイなどのアジアのNICSも実質的に開発援助を近隣諸国に拠出しているようである。OPEC諸国については、間接的な研究や報告書も見つかっていない状態であり、来年度の課題となった。
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