今年度は最終年であり、過去5年間更新してきた日本のODAの受入国・目的別パネルデータ構築の完了が主要な活動となった。当研究代表者を中心して、このデータ作業を担当したRAやこのデータを基にした共同研究者が主な参加者となり、最終会合「日本のODAデータに関する報告会」が開催された。最初に、日本の無償援助と技術援助のうち、少数ながら、未だに公開されていない案件別支出データが存在している問題が提起された。そのため、国内で公開されているデータを基にDAC基準のセクター別支出額を計算しても、CRSデータと最終的に一致しないという根本的な課題が残されたままとなった。次に、アジアの二大国である中国とインドに対する2国間ODA支出データについて報告した。我々のデータから2国の各地域へのODA配分のパネルデータを再構築した。簡単な計量的な分析の結果、中国への地域別ODAと一人当たり地域別所得との関係は有意でなく、日本の中国へのODAは貧しい地域に多く配分するような、利他的な動機ではないという結果となった。インドでは最近急速にODA支出が伸びていることもあり、単純な分析では明確な結論は得られなかったが、これら2国に対する厳密なデータ更新と計量分析が緊急の研究課題となった。その際、日本から各地域への直接投資や貿易額のデータを説明変数として加える方向性で一致した。最後に、当プロジェクトにおいて試みられてきた、日本の地方自治体による開発援助支出データの構築について報告された。現在でも、情報公開の壁は高く、インターネット探索による構築が可能な神奈川県と、年次報告書により構築がなされた群馬県以外、非常に困難な結果となった。将来的には、現在国際協力的な拠出額を急激に拡大してきた新興国の中から、最近DACの正式メンバーとなった韓国を研究対象として、その基礎的なデータ構築を始めることにした。
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