(1) 珠江データ、上海市で働く出稼ぎ労働者を対象としたアンケート調査のマイクロ・データを解析し、大都市労働市場の構造変化とそのメカニズムを実証的に分析した。その成果を学術論文にまとめて発表している。 (2) 江西省など中部農村で農家調査を継続し、農家人口および農村労働力の利用状況に関する基礎データを蓄積している。こうした一次データ、および、農業センサスの集計データを用いて、農家の人口変動と農村労働力の構造転換を明らかにしつつある。 (3) 『中国農民工の調査研究--上海市・珠江デルタにおける農民工の就業・賃金・暮らし』(晃洋書房1を上梓した。過去10年間で集めた膨大なマイクロ・データを整理、分析し、農民工の就業、賃金、暮らしの実態を浮き彫りにしている。これらの実証分析を通じて、農民工と戸籍住民による新型二重構造の変容を解明している。 一連の大規模なアンケート調査から得た一次データと、人口センサス、農業センサス等から得た二次データを駆使し、中国経済における労働需給の変化をダイナミックに捉えることができた。 大都市、沿海部で起こっている人手不足の現象は、現存制度の欠陥に起因した部分が大きく、中国経済がすでにルイスの転換点を超えたとの見方は正しいとはいえないと結論付けた。 本研究の成果から、中国経済における構造調整の方向性や、日本企業の対中ビジネス戦略を考える上で重要な政策的インプリケーションが得られている。
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