(1)2008年に珠江デルタの9市で出稼ぎ者2500人、09年に上海市で出稼ぎ者と地元住民1500人ずつを抽出して、就業、賃金、暮らし等に関するアンケート調査を実施し、一次データを開発した。人口センサス、農業センサスなどの集計資料を整理し、本研究用のデータベースも構築した。 (2)中国における労働需給の社会経済環境が大きく変化し、無制限的労働供給が困難となりつつあることは間違いない。しかし、それはルイス流の転換点理論だけで説明できるものではない。労働供給の源泉である農村、労働力を供給する主体である農家人口、雇用・賃金・社会保障に関する基本政策で起きた地殻変動が労働市場に与えたインパクトも十分に考慮されなければならない。 (3)都市農村間の二重構造、大都市内の二重労働市場に戸籍の壁が低くなり、個人の能力・努力の持つ意味が重要となりつつある。諸制度の欠陥の是正がさらに進められれば、農業余剰労働力の有効利用は可能となり、経済成長に対する労働制約も緩和されよう。
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