研究概要 |
これまで(平成20,21年度),既存研究のサーベイ,アジア諸国の部品貿易についてのデータ収集,およびデータの分析を行ってきた。研究の第1段階として東・東南アジア諸国は部品貿易の構造において北米やEUの地域と異なるかどうかをテストした。その結果、貿易額で見ても全貿易に占めるシェアでみても東・東南アジア諸国は他の地域以上に多くの部品貿易を行っていることが統計的に確認できた。さらに各国の直接投資データを使用し、東・東南アジア諸国では直接投資が大きな役割を担っていることを統計的に確認した。 次に第2段階として東・東南アジアの部品貿易増大の要因はこれら諸国が海外から受け入れた多国籍企業の輸出行動にある,という仮説のもと,理論モデルを構築し実証研究によってそのモデルの有効性を検証した。理論モデルを用い,川上企業と川下企業が垂直的に統合された場合に,部品貿易の流れが部品生産国から最終財生産国に向かうための条件を明らかにした。その条件は,多国籍企業が進出した国では,その国の市場規模が大きければ大きいほど,輸送にかかる費用が小さければ小さいほど,そして直接投資額が起きければ大きいほど本国からの部品輸入が増大する,というものであった。このモデルの含意はさまざま条件をコントロールした後であってもデータで実証的に正しいことを確認した。論文は現在早稲田大学のワーキングペーパーにし,ジャーナルに投稿すべく改稿中である。 しかし,現在までの検証ではデータの制約上,多国籍企業を日系企業に限らざるを得なかった。今年度の可能性として,日系多国籍企業のみでなくアメリカの多国籍企業も考慮に入れた分析を行いたいと考えている。そのことによって貿易政策の影響をより具体的に調べることができるはずである。(735文字)
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