本研究の目的は、地方財政制度において、制度とそのメカニズムとの関係を体系的に分析し、この制度に関する制度分析の基礎を確立することにある。研究対象は、地方財政制度であり、我が国における現在と過去の制度、および諸外国における制度である。各制度を法律に則して数学的に定式化し、制度の特性を明らかにしながら、制度の下で経済主体の合理的な行動はどのようなメカニズムを生じさせるかを理論的に考察する。制度とそのメカニズムの関係を解明していくことは、現在、制度改革が迫られている地方財政において、重要な理論的基礎となる。 平成22年度は、研究期間の3年目である。制度分析の発展を図ってきており、日本の現行制度の分析を中心としながら、日本の過去の制度と諸外国の制度を含め、各制度の制度分析を行い、制度とそのメカニズムの関係を分析してきた。各個別の制度について、制度に基づく理論モデルを構築し、制度の下で生じるメカニズムの解明を図ってきた。研究の成果としては、今年度は論文として発表していないが、23年度に図書の形で発表する予定である。 さらに、前年度と同様、科研費を用いて、地方財政制度の分野における電子化したデータベースの充実を図ってきた。制度を研究する上で、日本および諸外国の法律やデータ等、非常に多くの資料が必要である。資料・データが徐々に充実してきたことは、今後の研究の重要な礎となるものである。 現在、地方財政の分野における重大な問題は、我が国の近年の制度改革で、真の改革が行われていないことである。この理由は、制度改革の礎となる理論的な基礎が十分ではないためである。現在の地方財政の議論は、抽象的な理論研究と総務省を中心とした制度論であり、いずれも現実問題に対応した処方箋を提供できていない。現在、今までの各制度に関する私の分析結果を体系的にまとめ、新たに制度分析に基づく地方財政理論を構築している過程にある。
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