本研究では、地方財政における制度とそのメカニズムの関係を体系的に分析し、制度改革の理論的基礎を構築する。特に、現行の地方財政制度が疲弊し、制度改革が迫られている現在、制度とそのメカニズムの関係を理論的に解明することによって、改革に必要な理論的基礎を構築していく。具体的には、以下の点を解明する。 (1)地方財政制度として、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、フランスの地方財政制度を取り上げ、これらの制度の下で生じているメカニズムを解明していく。これらの国の法律(地方財政法)に則して制度の体系を数式で定式化し、制度の体系を明らかにしながら、この制度の下で経済主体の合理的な選択がどのようなメカニズムを生じさせるかを解明する。日本との国際比較を行いながら、制度の相違がどのようなメカニズムの相違となって表れるかを分析する。 (2)日本の地方財政制度の歴史的な発展過程を検討し、その中で制度とそのメカニズムがどのように変化してきたかを検討する。制度とメカニズムの関係を日本の歴史的な展開の中で捉える。当時の地方財政関係の法律に則して制度の体系を数学的に定式化し、制度の体系を明らかにするとともに、この制度の下でどのようなメカニズムが生じてきたのかを解明する。 (3)最終的な目的は、現行の日本の制度について望ましい制度改革を解明することにある。現行の日本の地方財政制度については、今までに地方財政法等の法律に則して数学的な定式化を図り、これに基づいて制度分析を行ってきた。今までの研究成果とともに、日本の過去の歴史的な過程、および諸外国の制度の分析を踏まえながら、制度とそのメカニズムの解明に一層の発展を図っていく。 最終的に、従来の抽象的・非現実的な理論モデルでなく、現実の制度に基づいた独自の理論モデルを構築し、望ましい制度改革の理論的な礎となるものにしていく。
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