研究概要 |
本年度は現在の世界的た経常収支不均衡問題、或いは所謂グローバル・インバランス問題の核心に位置するとされる、中華人民共和国の為替レートと貿易収支の関係に焦点を合わせて研究を行らった。その過程で明らかになった潜在的問題のひとつは、過去の相当期間において二重為替相場制度を採用し、また政府所轄の対外収支統計の信頼性や詳細に疑問が残る同国の経常収支のダイナミックスを通常の統計的・計量経済学的手法で解析することの難しさである。 このようなハードルに直面しつつも推し進めた実証分析の結果かちは、中華人民共和国の貿易フローは相対価格の変動に反応するものの、その動きは必ずしも経済理論の予見に沿ったものではなく、特に輸出よりも輸入にその傾向が見られることが判明した。また、同国の多国間および対米二国間貿易フローの相対価格に対する反応は統計的有意性を持つものの、為替の変動による輸出入の数量変化は大規模なものとは言えず、例えば国際的な政治・政策の舞台でしばしば言及されている人民元の切り上げが現在の不均衡問題の解決に大きな役割を果たすとは考え難いことが特に重要な発見である。 上記のような暫定的研究成果を在米の研究者ととりまとめ、研究論文"China's current account and exchange rate"として米国経済調査局(National Bureau of Economic Research)の査読つき出版物China's growing role in world trade (Robert C. Feenstra and Shiang Jin Wei, eds.)に投稿を済ませた。
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