20年度においては、今次研究の初年度として、まず、アジア諸国における資本取引規制の推移に係る資料の収集・整理を行った。これまで調査の力点を置いてきたアジア危機3力国(タイ、インドネシア、韓国)における97-98年の危機前の時期における規制の推移に加え、20年度においては、対象を他のアジア諸国に広げるとともに、危機前のみならず危機後の規制の推移も含めて調査を進め、これまでに、中国、マレーシア、香港、シンガポールなどの諸国について、1980年代半ば以降の関連規制の推移について一次的な整理を行った。今後はこれを精査・補完するとともに、深刻な影響を免れた国・地域と危機国との問にどのような違いがあるかを調べることが課題となる。 次に、20年度においては、上記の危機3力国について、これまでに収集整理した資本取引規制の推移(特に、顕著な自由化措置の導入)と危機の背景となった不安定資金の大量流入との間にどのような関係が認められるか、統計的な検証を試みた。推計式の定式化についてなお検討の余地が残るものの、規制緩和が不安定資金の流入レベルを高めた可能性があるとの結果が得られた。 更に、20年度においては、グローバル化の進展という本研究の背景となるプロセスをより深く理解し、研究に生かす観点から、グローバル化の概念・推進力・ベネフィットとコスト・リスクについて、これまでどのような議論が行われているか、一定の範囲で整理を行った。グローバル化は、それが与える利益機会を活用しようとする経済主体の自発的行動が最大の推進力となっている(従って、今後も基本的に進展する)と見られることなどの示唆を得た。
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