研究概要 |
22年度においては、アジア諸国の資本規制やIMF・米国の政策の分析を続ける一方で、先般の世界金融危機により大きな影響を受けた中東欧・バルト諸国の状況を把握するため、当該地域への金融支援において中心的な役割を担った欧州復興開発銀行(EBRD)へのヒアリング調査を実施した。その結果、これら諸国(その多くは資本自由化を実施済みで、近年活発な資本流入の下で高成長を続けていた)がリーマンショック後に大きな資本引き揚げ圧力に曝された際に、これが地域的な金融危機に進展することを未然に防いだのは、EBRDが主導したPSI (Private Sector Involvement : 民間セクター関与)、即ち民間金融機関による貸付残高の維持を含む関係者間の協調行動(今般のケースはVienna Initiativeと呼ばれた)であったことが明らかとなった。この事例は、資本フローの不安定性を背景とする資本流出のリスクからは、ある程度経済の発展した開放的な小国も無縁ではないこと、更に資本規制が既に撤廃されている場合には、(アイスランドのような広範な資本流出規制を導入しない限り)PSIによらざるを得ない場合があることを改めて示したものと言える。また22年度には、アジア通貨危機時に台湾が他の近隣諸国とは異なり深刻な影響から免れた理由を調査するため台湾を訪れ、中央銀行等よりヒアリングを行った。これにより、豊富な外貨準備を有していたことに加え、慎重な資本取引の自由化が重要な要因であったことが明らかとなったと考えている。更に22年度には、対外的な発信として、22年秋に開催されたG20首脳会議に向けて韓国法制研究所が開催した国際会議"G20 and the Global Legislative Strategy" (Seoul, Korea)に招聘され、資本フローの不安定性と対応手段に関するこれまでの研究の成果を"Vblatility of International Capital Flows and Challenges for Emerging Market Economies"として報告した。
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