本研究は、近年高等教育財政に導入されている業績連動型の運営費交付金について、その仕組みと効果を経済学の視点から分析する。具体的には、(1)OECD主要国における予算制度改革と高等教育財政における改革動向をサーベイし、(2)我が国の国立大学法人の運営費交付金の各大学への配分状況についての実証分析を行うとともに、(3)業績連動型運営費交付金を導入した場合の効果を分析する。 (1)については、平成21年度においては、フィンランド、ドイツ、フランスについて、大学の運営費交付金の配分方法(金額、業績基準、配分機関等)を調査分析した。上記の国のうち、豪州以外は現地調査も実施した。具体的には、各国の高等教育所管省、大学評価機関、大学の財務部、高等教育研究機関や研究者などを訪問し、各国の制度運営の実態を調査した。 (2)については、平成21年度は、平成20年度に続いて、運営費交付金の種類別大学配分額、各大学の各種業績データ(学部・学科別学生数、卒業者数、大学院修了者数、教職員数、学生の授業評価、就職者数、科研費獲得金額、財務データ(人件費、物件費、収支、資産負債差額等))などを収集した。また、第1期中期目標期間(平成16年度から平成21年度)における中期目標の達成状況及び教育・研究の現況についての評価結果についても分析した。 (3)については、平成21年度は、平成20年度に各大学の決算データから教育費と研究費を抽出し、それぞれ新しい配分ルール(業績連動型を含む)を仮定して、配分についてのシミュレーションを実施し、得た結果の精査を行った。
|