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2009 年度 実績報告書

株主権利保護に関係する法制度改革が企業価値に及ぼした影響についての実証分析

研究課題

研究課題/領域番号 20530270
研究機関信州大学

研究代表者

廣瀬 純夫  信州大学, 経済学部, 准教授 (60377611)

キーワード企業金融 / 企業統治 / 金融論 / 株式市場 / エクイティ・ファイナンス / MSCB / 債権放棄 / 倒産
研究概要

平成21年度には,株主権利保護に関する法制度改革の影響を検証するため,主に以下の2点について実証分析を進め,研究成果の公表を行った.
1.MSCB発行の動機について
2004~2005年にかけて盛んに発行されたMSCB(Moving Striking-price Convertible Bonds)について,既に平成20年度に発行時の株価への影響について分析を実施したが,さらに発行の動機を分析するため,発行後の資金支出の動向を,他のエクイティ・ファイナンスの手法と比較した.その結果,MSCB発行企業は,時価発行増資実施企業やCB発行企業と比べ,負債返済に積極的な傾向にあることを確認した.また,資金調達実施から3期後の資本構成の変化を検証したところ,MSCB発行企業のみが有意に負債比率が低下している.さらに,MSCB発行から3期後の企業価値の変化を分析したところ,負債返済に積極だった企業ほど,企業価値が改善する傾向にあることを確認した.このことからMSCBの発行は,負債負担を軽減して資本構成を改善し,企業価値を改善させる際に有用であると推測される.
2.私的整理による企業再建の効率性について
大口貸出先の倒産処理が銀行自身の経営を揺るがしかねない局面では,私的整理による企業再建は,銀行経営者のモラル・ハザードによって非効率になることを実証分析によって明らかにした.具体的には,日本で1993年1月から2004年1月にかけて行われた債権放棄を分析対象とし,効率的な企業再建がなされたか否かを検証した.プロビット分析の結果によれば,メインバンクのリスク・エクスポージャーが高い,すなわち,メインバンクの信用力への影響が大きい大口貸出先であるほど,債権放棄実施後に再破綻する傾向にあることが確認された.さらに,貸出先から債権放棄の要請があった時点に着目した株価イベント・スタディを実施したところ,メインバンクのリスク・エクスポージャーが高いケースでは,債務者企業の株価は有意に上昇する一方で,メインバンクの株価には負の影響が生じている.つまり,大口貸出先に対する破綻処理は銀行にとって有益なものとはならないと市場が評価していると考えられる.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2009 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 資金調達手法の選択と既存株主の利益:CB、MSCBと時価発行増資の比較2009

    • 著者名/発表者名
      田中亘・広瀬純夫・大木良子
    • 雑誌名

      GCOEソフトロー・ディスカッション・ペーパー・シリーズ:GCOESOFTLAW-2009-1 GCOESOFT LAW-2009-1

  • [雑誌論文] Out-of-court debt restructuring si ineffective when a distressed firm is a large borrower from its main bank : Evidence from Japan during its "lost decade"2009

    • 著者名/発表者名
      広瀬純夫・秋吉史夫
    • 雑誌名

      Staff Paper Series '09-05 December 2009 STaff Paper Series '09-05

  • [学会発表] 日本におけるエクイティファイナンスの実情2009

    • 著者名/発表者名
      広瀬純夫
    • 学会等名
      法と経済学会 第7回全国大会
    • 発表場所
      熊本大学 五高記念館
    • 年月日
      2009-07-05
  • [備考]

    • URL

      http://www.j.u-tokyo.ac.jp/gcoe/pdf/GCOESOFTLAW-2009-1.pdf

  • [備考]

    • URL

      http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/economics/research/pdf/sp_2009-5.pdf

URL: 

公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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