研究目的は、世界的に資本市場の開放が急速に進む中で、東アジアの経済発展を支える金融システムを如何に再構築すべきかを、そして、そのために、金融市場に如何なる国際公共財を導入すべきかを、さらに、日米(日本・米国)協調は如何にあるべきかを、最近の「メカニズムデザイン(制度設計)」の手法を使って理論的・実証的・政策的に研究する。こうして、本研究は、東アジアの金融取引の仕組みを制度設計するものであり、そこにおける国際公共財と日米協調のあり方を、メカニズムデザインの観点から論ずるものである。この目的に対して、今年度は、N国モデルに国際公共財を導入して、その公共財を作る各国の生産性が異なる場合に最適な所得分配のあり方を研究し、国際公共財の役割に関する理解を深めた。 この論文をEast Asian Economic Association Conference(平成20年ll月フィリピン)などで報告して、大阪大学のディスカッションペーパとして発行した。また、そのモデルの均衡解の存在と一意性を証明し、その論文も、学術雑誌に投稿中である。他方、途上国と先進国と、そして、金融資産のリスクによる両国の利害対立を解消するための国際通貨基金IMFを導入した国際金融モデルを構築した。このモデルを用いて、IMFへの出資比率とIMFからの借入限度額との関係、そして、それらと2国の社会的厚生との関係を考察し、その論文はPacific Rim Economic Conference(平成21年3月京都)で報告した。また、これらの研究との関連で、各国の全要素生産性に関する論文などを作成し、Western Regional Science Associ ation Conference(平成21年2月Napa in USA)で報告して、大阪大学のディスカッションペーパとして発行した。
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