研究目的は、世界的に資本市場の開放が急速に進む中で、東アジアの経済発展を支える金融システムを如何に再構築すべきかを、そして、そのために、金融市場に如何なる国際公共財を導入すべきかを、さらに、日米(日本・米国)協調は如何にあるべきかを、最近の「メカニズムデザイン(制度設計)」の手法を使って理論的・実証的・政策的に研究する。こうして、本研究は、東アジアの金融取引の仕組みを制度設計するものであり、そこにおける国際公共財と日米協調のあり方を、メカニズムデザインの観点から論ずるものである。この目的に対して、今年度は、N国モデルに国際公共財を導入してその役割を明らかにしたもとで、そのモデルから最適公共財の数値解を求めるとともに、それらの解がN国間の所得分布やN国数など外生的なパラメータに依存することを明らかにした。また、パラメータの大きさにより各国が公共財のフリーライダーとなる閾値を求めるなどしてモデルを発展させ、来年度の実証分析の枠組みを構築した。これらの論文を日本経済学会(平成21年6月京都)や生活経済学会(平成21年6月岡山)で報告し、外国の学術雑誌に投稿中である。他方、途上国と先進国が近年の世界金融危機の中でどのように対応し、経済成長がどのように停滞しているかなどの事実認識を行い、両国の直面する問題の相違を明らかにした。それらの論文をNorth American Regional Science Association(平成21年11月サンフランシスコ)やAll China Economics International(平成21年12月香港)で報告した。こうした研究をもとに、両国の直面する相異なる金融問題に対して、国際通貨基金IMFや、BIS規制という国際公共財が如何に問題を解決し利害対立を解消し得るかを議論し、実証する予定である。
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