研究目的は、世界的に資本市場の開放が急速に進む中で、東アジアの経済発展を支える金融システムを如何に再構築すべきかを、そして、そのために、金融市場に如何なる国際公共財を導入すべきかを、さらに、日米(日本・米国)協調は如何にあるべきかを、最近の「メカニズムデザイン(制度設計)」の手法を使って理論的・実証的・政策的に研究する。こうして、本研究は、東アジアの金融取引の仕組みを制度設計するものであり、そこにおける国際公共財と日米協調のあり方を、メカニズムデザインの観点から論ずるものである。この目的に対して、今年度は、前年度のN国モデルに国際公共財を導入しだ研究の不備を修正して精緻化したもとで、先進国のODA (Official Development Assistance)政策において、資金の贈与と国際公共財の贈与のどちらが途上国の厚生を増加させるうえで好ましいかを検討し、さらに、日米が非協調的となるナッシュ均衡解と協調的となる均衡解を比較検討した。その論文を日本経済学会(平成22年6月千葉)で報告し、外国の学術雑誌に投稿中である。他方、日本と米国が近年の世界金融危機の中でどのように対応し、経済成長がどのように停滞しているかなどの事実認識を行い、両国の直面する問題の相違を債券リスクプレミアムを使って明らかにした。その際に、金融の協調政策が日米および途上国の経済にどのような影響を与えるかを分析し、その論文をAsia-Pacific Economic Association(平成22年7月香港)で報告した。また、最終年度であることから、これまでの研究のまとめを行い、本研究は、日米の直面する相異なる金融問題に対して、国際通貨基金IMFや、BIS規制という国際公共財と東アジアへの資金の提供のどちらが、東アジアの金融問題を如何に解決し利害対立を解消し得るかの研究の端緒を成したと評価できる。
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