国および地方政府からなる政府部門全体での財源配分の望ましいあり方を考察し、これを実現するために、どのような地方財政調整制度が分権型財政制度に適合的であるかの制度設計を考察しつつある。 今年度においては、国際比較にウエイトを置き、以下のような、連邦国家と単一国家に関する知見を得た。日本の地方交付税制度と対極をなす、ドイツにおける州間の水平的財政調整制度の戦後60年間の推移を実証的に分析した。戦後を3期に分け、それぞれの期間における財政調整原則の変化を分析し、2005年度に導入された財政調整制度を、新たな原則としてではなく、第3期に含まれることを明らかにした。 地域間財政格差を縮小する手法として、一人当たり税収の均等化を目標としてきた(旧)西ドイツであるが、1990年10月3日のドイツ再統一により、(旧)東ドイツ地域が財政調整対象に含まれるため、2005年度から新財政調整法が施行された。いくつかの点で、これまでの一人当たり税収配分均等化を原則とする旧財政調整法と異なり、特に注目すべきは、過疎地域にも追加的な財政需要を認めた点である。ただし、現行の財政調整制度は、経過措置的側面を有し、時限とされている。 これまで、ドイツの水平的財政調整に関しては、日本の地方交付税とは異なり、税収配分の均等化が強調されてきたが、後進地域を含む形での再統一により地域間財政格差がきわめて大きくなると、それのみでは対応できないことが指摘でき、日本における地方交付税の今後のあり方を考察する上でも有益である。
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