研究概要 |
本年度は、財務データに表れる企業属性の変化と配当政策との関係および投資主体別売買行動と株式市場インデックスとの関係について検証を行った。 1.継続的に財務データが入手可能な1,385社について多段階ロジットモデルを推計することにより、増配、減配といった配当政策の変更の要因を分析した。その結果、収益性や成長性を表す説明変数の有意性に加えて、前期の配当状況が今期の配当行動、すなわち有配あるいは無配を維持しようとする誘因が強く働いていることが実証された。またモデルの説明力は企業の配当行動の決定に対して非対称性を有し、減配や復配といった一般に経営の大きな判断が必要と考えられる事象については、代表的な財務情報以外の追加的な情報が必要であることが明らかになった。 2.国内機関投資家、国内一般投資家および外国人投資家などの投資期間および流動性制約が異なると考えられる投資主体別取引高データと市場インデックスデータとを用いて、主体相互間の取引行動および取引行動と株価水準の変動との関係を分析した。その結果、外国人投資家の売買行動と個人投資家の売買行動との間には負の相関関係が存在し、また外国人投資家の売買行動と株価水準との問にはグレンジャーの因果関係が見いだされることなどが明らかになった。 概ね今年度に計画していた通りの進捗状況である。
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