本年度は、前年度の結果を踏まえ、理論モデルの改善と制約付き均衡解の導出およびモデルを基に下記の計量分析を行った。 1.異なる目的関数を持つ経済主体である国内機関投資家、国内一般投資家および外国人投資家のそれぞれが、投資期間および流動性制約が異なる場合にモデルを拡張し、外国人投資家の買越し高と証券価格水準との相関を均衡解として導出した。 2.外国株式市場インデックスおよび投資主体別売り越し額を基にイベントスタディを行い、株価変動に関して一時的ショック群とレベルシフト群とに分類し、それぞれ期首、期末の財務データ等より求めた企業価値変動との因果関係の検定を行い一定の関係があることを明らかにした。 3.投資主体別売り越し額および外国株式市場インデックス等を説明変数とした複数銘柄に関する体系推定をGMMによって行い、流動性制約のある下で市場の効率性の検証を行い、取引高が十分にある主要銘柄を用いる限り市場の効率性を棄却できないことを示した。 明らかになった。 一連の分析を通じて、短期的には外国人投資家による一方向の売買によって市場価格が本源的価値から乖離することが観察されるもののそうした動性は市場におけるノイズと有意に異ならず、価格調整が行われる結果と考えられるボラティリティが持続する時間を考慮すれば、市場が効率的であることを棄却できないことが明らかになった。
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