投資ファンドの投資プロセスの入り口(初期投資)から出口(投資回収)までの投資行動を、とくに回収行動に焦点を当て、M&A市場を対象として、投資行動の意思決定と業績(投資収益率)を計量的に分析することが、本研究プロジェクトの研究目的である。研究計画期間の第1年目である平成20年度は、対象データの収集とデータベースの作成を中心に研究作業を進めた。具体的な研究実績は、投資ファンドのM&Aによる売却行動のデータベースの作成である。投資ファンドの回収行動の始まった2000年(5月)から2009年3月までの全案件を(株)レコフデータの『M&A CD-ROM』を利用して抽出し、関連する財務データを付加したデータベースを作成した。買収(買手側)によるエグジットの件数は202件(金額表示があるものは152件)、資本参加・営業譲渡・事業譲渡が95件(金額表示があるものは51件)である。上場によるエグジットの件数は、世界的な金融市場の低迷の影響で非常に少ない(2008年は2件)ため、買収案件に限定した分析で、投資ファンドのエグジット行動の基本的特徴の分析を行うことができると考えられる。投資ファンドの売却によるエグジットは今後も進むことが予想されるため、最終的には分析対象期間は、研究期間の最終年度(平成22年度末)まで延長する予定である。本年度は、これまでに完成したデータベースで計量分析を行い、回収行動に関する理論仮説の検証に着手する。
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