今年度は、再編交付金に至る基地維持政策の変遷を跡づけ、それが沖縄県内自治体財政と地域経済にどのような影響を及ぼしているかについて、検証した。 その結果、明らかになったことの第1は、再編交付金の基本的仕組みは1974年に制定された「防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律」第9条にもとづく「特定防衛施設周辺整備調整交付金」を踏襲していることである。それは、対象となる施設や自治体を防衛大臣の裁量で選別すること、面積や騒音被害などを点数化して、先に配分額をきめること、そしてその配分額の範囲内で自治体が政府の用意したメニューの範囲内で事業を選択するという枠組みである。9条交付金は施設整備に限定していたが、次第に対象が拡大し、再編交付金ではソフト事業にも投入できることとなった。 第2は、10年余りにわたる新たな基地維持財政政策の展開により、沖縄における基地関連財政支出が質量ともに重大な変化を遂げてきたことが明らかになった。量的変化とは、従来沖縄における政府の財政支出の中心を担ってきた内閣府沖縄担当部局(旧沖縄開発庁)を所管とする振興開発事業費が減少し、防衛省を所管とする事業費の相対的比重が高まってきたことである。質的変化とは、従来の基地関連の財政支出は、沖縄の人々がみずからの意志で基地を引き受けているわけではないという点を考慮した賠償金ないしは補償金的な性格を有していたのに対し、新たな基地負担を受け入れる見返りとしての性格が濃厚になったきたことである。 第3に、新たな基地維持のための財政支出を最も多く受け入れてきた名護市の実情を見る限り、持続可能な地域経済構築につながるような成果がみられないということである。むしろ、バブル的な性格を有する財政支出への依存が長年続いていたことの反動で、建設業などの倒産が他自治体に比して著しいという状況がみられることがあきらかにかった。
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