今年度はまず、基地依存からの脱却をめさす試みの一つとして、沖縄市の泡瀬十潟埋立事業を調査・分析した。裁判所から、その「経済的合理性」について疑問符を投げかけられたこの事業は、沖縄独特の高率補助政策により、市が立案した事業でありながら、当面は国が事業主体となっていることにより、成り立っている事業であった。それはまた、一つの県の計画を40年近くも国が実施していることの表れであり、地方分権を進める上でも、改善の余地が大きいことが明らかになった。 次に、名護市をはじめとする新たな基地維持政策を受け入れてきた本島北部の地域経済の実情を調査した。その結果、名護市をはじめとする北部地域においては、新たな政策が展開されたこの10年間において、市町村内純生産、失業率、生産労働人口など、どの経済指標においても特段の改善は認められなかった。他方、財政力に見合わない過大な収入を使い切ることを優先したため、地域経済の持続性につながらず、今後の維持管理に多大な負担を及ぼしかねない施策が、少なからずあることが明らかになった。 第3に、大規模な基地返還が予定されている韓国の基地維持財政政策と跡地利用政策について、韓国で最も基地が集中している京畿道内の自治体を調査した。韓国でも、基地の存在による地方税収の欠如などへ負の影響はあるが、それに対して、日本のような補填政策はとくに行われていないことがわかった。また、各地で計画されている跡地利用計画は、企業や大学などの誘致が中心であることがわかった。これについて、韓国政府がどのような支援策を行っているのかについては、22年度において調査する予定である。
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