わが国の地域金融機関における中小企業貸出技術に関しては、リレーションシップ貸出手法に限界があると言わざるを得ない。リレーションシップを変更する企業の特徴を分析すると、成長性の高い、若い小企業、貸出競争の激しい地域の企業、取引銀行のパーフォーマンスが悪い企業などの特徴が見られ、地域金融機関にとってリレーションシップ貸出が万能薬のように中小企業貸出に効くというわけではない。しかるに、わが国でリレーションシップ貸出が行われてきた背景には、わが国の不動産担保の制度には江戸時代からの長い歴史があり、特に地方で顕著であったという歴史的経緯がある。 新しい貸出手法の一つであるクレジット・スコアリングに関しても問題があることが示される。スコアリングのモデルに関する再検討も必要であり、また企業側の粉飾という問題も明らかになってきた。効率性を追求し、コスト削減のためにモニタリングを行なわない、この貸出手法には限界があり、また地域密着をモットーとする地域金融機関経営においては、顧客との齟齬を生じさせる懸念があるとも言える。 動産担保貸出については地域金融機関でも拡張しつつある。しかし動産とはすなわち、日々の営業活動に関係する売掛金・在庫などであり、リレーションシップ貸出の重要な要件であるソフト情報の入手が確実にできていれば、担保にする必要がないとも言える矛盾点を地域金融機関は持つことになる。クレジット・スコアリングや動産担保貸出は地域金融機関よりも、むしろメガバンクで拡張している。今後、地域金融機関はメガバンクと同じようなクレジット・スコアリングや動産担保貸出を行うのではなく、これら新しい手法を参考にしながらも独自のビジネスモデルを開発してゆくことが課題となるであろう。
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