本研究の目的は、生活関連の社会資本が出生率に与える影響を実証的に明らかにすることである。本研究では、まず(1)生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について、関連するデータをなるべく近年までのものに更新し、実証分析をよりブラッシュアップする。また、個別の生活基盤型社会資本の近年までのデータを構築する。さらに、(2)個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張する。最後に、(3)所得などの経済変数を外生としているものを内生変数化するために、理論モデルを新たに構築すると共に、社会資本整備が出生率に及ぼす影響について経済政策を考察する。研究の時間的流れとしては、基本的には上記の(1)(2)(3)の順で進めてゆく予定である。 本年度は研究初年度ということもあり、実証分析においてもっとも重要となる基礎的なデータの整備を中心に進めた。本研究で用いるデータは都道府県パネルデータで、これまでの取り組みによって、平成7-8年度までしかデータが整備されていなかった。そこでまず、地価関数や出生率関数を推計する準備として、(1)に関連し出生率としては平成18年度まで、社会資本のデータとしては平成15-16年まで整備した。特に社会資本については(2)にも関連する個別の社会資本(市町村道、公園、水道、社会福祉施設等)についても整備を進めた。以前のデータ期間では、現在より10年以上のタイムラグがあり、問題があると思われたからである。また、実証分析において説得力があり頑健な推定結果を得るためには、推定方法等の工夫も重要であるが、まず経済データの整備が欠かせない重要な研究活動の一部となる。
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