本研究の目的は、生活関連の社会資本が出生率に与える影響を実証的に明らかにすることである。本研究では、まず(1)生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について、関連するデータをなるべく近年までのものに更新し、実証分析をよりブラッシュアップする。また、個別の生活基盤型社会資本の近年までのデータを構築する。さらに、(2)個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張する。最後に、(3)所得などの経済変数を外生としているものを内生変数化するために、理論モデルを新たに構築すると共に、社会資本整備が出生率に及ぼす影響について経済政策を考察する。研究の時間的流れとしては、基本的には上記の(1)(2)(3)の順で進めてゆく予定である。 本年度は研究2年目ということもあり、(2)の個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張した。一般的なパネル分析での総合効果として、道路と都市公園がマイナスとなって、また公共賃貸住宅、水道、下水道がプラスとなっている。一方で、廃棄物処理および文教は出生率に対して効果はないという結果が得られた。 つぎに、人口密度により都道府県を二つに区分した場合の分析結果として、高人口密度の地域では道路、水道、都市公園、文教がマイナスで、下水道および廃棄物処理がプラスとなった。また、低人口密度の地域では公共賃貸住宅と下水道がプラスとなったが、廃棄物処理、水道、都市公園、文教がマイナスとなった。このような結果が得られた理由として、水道、公園、文教の場合、社会資本の整備によって地価が上昇し、その影響が大きいために出生率がマイナスになる影響が強く出ていることが挙げられる。
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