本研究の目的は、生活関連の社会資本が出生率に与える影響を実証的に明らかにすることである。本研究では、まず(1)生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について、実証分析をよりブラッシュアップすること、(2)個別の生活基盤型の社会資本が出生率に及ぼす影響について分析を拡張すること、(3)所得などの経済変数を外生としているものを内生変数化するために、理論モデルを新たに構築すると共に、社会資本整備が出生率に及ぼす影響について経済政策を考察することを予定していた。研究の時間的流れとしては、基本的には上記の(1)(2)(3)の順で進めて、本年度は研究最終年度ということもあり、(3)所得などの変数を内生化する理論モデルを新たに構築すること、経済政策を考察することを予定していた。 しかしながら、2009年8月に政権交代があり、民主党が政権を担うことになったことによって、その政策に対応するように研究の方向性を多少変更せざるを得なくなった。民主党の政策として、2010年4月から「子ども手当」が支給されたこと、および「コンクリートから人へ」と言う言葉に表されている民主党政権の政策(予算の配分においてこれまでのような公共事業に向けられてきた予算を、子育て支援などに振り向けようという政策)が行われてきている。これらの政策は、本研究の内容に密接に関連しているので、研究の最終年度ではあるが本来の研究予定を若干修正した。すなわち、これまで行ってきた分析の大枠を維持しつつ、子ども手当などの直接の所得保障によって出生率が改善されるかを急遽分析することにした。分析の結果、子ども手当などの直接の所得保障は必ずしも出生率を改善せず、むしろ引き下げてしまうこともあり得るということが明らかになった。
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