本年度の研究は、欧州中央銀行の金融政策をより実証的に明らかにするために、昨年度のデータベースを拡充するとともに、それを用いた実証研究を試みた。キーとなる言葉を拾いながら、それと実際の金融政策の動向が、どのような関係にあるのか、最尤法を用いて推計を試みた。これは欧州中央銀行のアナウンスメントが、実際の政策にどのように反映されているのかを検証するものである。ただし、現段階では、未だ修正の余地があり、来年度の課題となる。 さらに、本年度は現下の欧州での金融危機に対して、欧州中央銀行がどのような政策を行っているのかを詳細に調査し、本研究課題との接合を模索した。特に、金融危機のための緊急対策の意志決定がどのように行われているかは、本研究とも密接に関連しており、それらを研究対象にする必要が生じている。さらに、その危機対応政策の出口戦略の模索も現実には発生しており、そのタイミングを考察することも重要な課題となり、本年度の研究対象にも加えた。これらは、来年度も引き続き、研究を行うべき課題であり、より詳細な欧州中央銀行の金融政策決定を観察必要がある。 また、本年度は、3件の学会発表を行ったが、2件は学会からの招待発表であった。発表内容は欧州の金融危機の現状とそれへの金融政策および財政政策による危機対策の評価であった。いずれも本研究テーマである欧州中央銀行の金融政策決定に関連したものであり、発表後の参加者との質疑応答は研究を進める上で、有意義なものであった。
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