22年度は本研究の最終年度となるために、その成果を出すことに専念した。具体的には、関西社会経済研究所での研究報告、山口大学での講演で、欧州中央銀行の金融政策の実証結果を報告した。特に、1)欧州中央銀行のコミュニケーションに焦点を当てた実証研究と、2)近年の欧州中央銀行による量的緩和政策の効果に関する実証研究に関した報告を行っている。 1) に関しては、欧州中央銀行の議事録から採集した言葉(word)をデータ化し、それを用いて欧州中央銀行の金融政策変更のコミュニケーションが金融市場に前もって予測を与える頻度が高いことを示している。2)に関しては、制約していないVARモデルを用いて、欧州中央銀行のマネタリーベースの変更が、株価、鉱工業生産指数の変化率、インフレ率にどのように影響を与えたのかの実証研究を行った。その結果、量的金融政策が株価には正の効果を与えたものの、実体経済にどのように影響を与えてきたかについては、有意な結果が得られなかった。そのため、量的緩和政策は、株価上昇を通じて銀行の財務構造を安定させ、結果としてユーロ圏の金融システムを安定にした効果を持ったことを示唆している。 これらの研究成果はわが国および欧州においてもまだ研究途上の領域であり、本研究の意義があるものと考える。
|