平成21年度は、地方の中堅・中小企業再生について、以下の3つの角度から調査・研究を行った。まず、種々の私的整理スキームに注目して、調査を進めた。特に、近年、企業再生において、私的整理が注目されていることから、私的整理の枠組みとその拡充を調査した。ただし、私的整理を適切に進めるための仕組みが必要であり、事業再生ADRや企業再生支援機構などの活動を挙げることができる。そこで、これら機関の役割や動向について調査した。第二に、金融危機後の中小企業金融の変化に着目して調査した。リーマンショックによる金融危機は一段落したが、地域の中小企業金融をめぐる状況は厳しさを増しているからである。第三に、信託スキームなどの利用についても検討を行った。引き続き、平成22年度においても、以下の点に留意し、調査・研究を行う予定である。(1)地方の中堅・中小企業再生における公的機関の役割を重視し、その活動の有効性や課題を検討するとともに、現在準備中の地域力再生機構などにも注目する。(2)私的整理スキームに注目して、調査を進める。その際には、私的整理と法的整理の連続性も視野に入れて検討する。(3)地方の再生においては、個別の企業や事業だけでなく、地域全体を面的に再生するような試みや第一次産業から第三次産業まで含めた統合的な再生が重要であり、このような再生の可能性を検討する。(4)事業再生を地域再生の観点を絡めて推進していく場合には、地域金融機関の全面的な支援が重要であり、金融機関が資金面のみならず人的支援や事業連携面での支援を行うことが再生当事者の負担軽減に繋がる。(5)その際には、グリーン・ニューディールに示されているように、環境対策や自然エネルギー開発、農業再生や食糧供給に対して世界的な注目が高まっていることに注目して、調査を進める。
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