本研究は、平成の市町村合併の総合的・多角的な視点からの検証を意図している。本年度は、研究初年度ということで、研究テーマの具体的な設定を目指して、1.現在までの合併状況の把握、2.既存研究の整理・検討、3.合併自治体の課題に関する情報収集、4.合併自治体へのアンケート調査、5.財政データを用いた計量分析のためのデータベース構築と予備的な分析を意図してきた。 まず初めに、合併の現状を文献および総務省へのヒアリング等を通して把握したところ、ほとんどの合併が2005〜06年度にかけての駆け込みで成就したことが分かった。つまり、ほとんどの合併自治体は合併後2〜3年しか経過しておらず、財政決算データが数年分、場合によってはまだ出ていないケースすらあることになり、当初計画したアンケート調査とそれを用いた財政分析については実施時期を変更し、本研究の最終年度に改めてその実施可能性を探ることにした。 そこで本年度は、合併後4年を経過した兵庫県丹波市の全職員(800名弱)を対象として、合併をめぐっての職員意識に焦点を当ててアンケート調査を実施し、その分析を試みた。この調査は、職員が合併をどのように見ているかという情報のみならず、職員の個人的属性(年齢、職種、居住地等)との関連性を分析可能にしてくれており、興味深いファクトファインディングが行えた。 また、合併自治体へのヒアリングを、福岡県内、富山県内、三重県内、兵庫県内で実施し、現地でしか知りえない情報を含めて、合併後に抱えている課題の整理が可能となり、今後の研究への問題設定につながる有益な情報が入手できた。 既存研究のサーベイや財政データの構築も進めたが、具体的な成果としてまとめるには至らなかった。次年度の早い時期に論文としてまとめる予定である。また上記アンケート調査の分析結果については、次年度6月に学会発表を予定しており、それについても論文としてまとめる作業を現在行っているところである。
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