本研究は、平成の市町村合併の自治体財政への影響を、総合的・多角的に検証することを意図している。本年度は、研究2年目に当たり、初年度に得た情報・知見を元に、具体的な研究テーマの設定とその推進を図った。とくに、1.合併に関する既存研究の整理・検討、2.合併自治体の課題の整理、3.合併自治体へのアンケート調査の分析とその成果の発表・取りまとめ、4.計量分析のための自治体財政のデータベース構築とその分析を進めてきた。 まず初めに、既存研究のサーベイであるが、合併自治体に対する分析が多方面で進んできており、それらをフォローするだけで精一杯であった。本研究の独自性を打ち出す方向性の検討は済んだが、サーベイとして具体的成果を出すには至らなかった。 第2に、合併自治体へのヒアリング調査を初年度に続き茨城県内と香川県内で実施した。合併に臨んだ自治体の思い・期待と合併後の課題について、ほぼ問題点の抽出ができたと思われる。ヒアリング調査から得た知見として、一つの論文にまとめる目処がたった。 第3に、初年度に実施した兵庫県丹波市全職員を対象とした合併に関するアンケート調査について、さらに分析・検討を進めた。合併に対する見方が職種・職歴などの個人属性と関連性を示すと同時に、行政サービスやまちづくり施策に対する見方とも関連していることが分かり、合併後のまちづくりを進める上での課題を明確にすることができた。 最後に、合併した自治体、しなかった自治体を識別しながら、両者の財政状態を比較するためのデータベースを一部構築した。これは3年目に向けての最大の研究テーマであり、財政が合併行動に影響を与え、逆に合併がまた財政に影響を与えるという、平成の大合併の特徴点を見出すことが出来た。
|