本研究計画は、1937年から1949年までの日中戦争時期から国共内戦時期の中国江南地域の地主-小作関係を中心とする農村社会経済の実態と変化を、新たにマイクロフィルム化された地方新聞や日本・中国等の諸機関が行った実態調査報告書等の文献資料と、日本及び中国・台湾・米国に収蔵されている文書史料の分析を通じて考察しようとするものである。平成20年度は『蘇州新報』・『江蘇日報』等の日中戦争時期の蘇州等江南地方の新聞のマイクロフィルムを購入・閲覧するとともに、台湾の中央研究院近代史研究所・国史館、日本の国会図書館、東京大学東洋文化研究所、防衛研究所において日中戦争時期の維新政府・江兆銘政権関係文書、農村実態調査、宣撫及び清郷工作資料の調査・収集を行った。これら資料の分析を通じて、占領所期の宣撫工作、1941年7月から始まった清郷工作及び蘇州等で実施された租賦併徴制度の実態がより具体的に理解できた以外に、拙稿「日中戦争期、中国江南の田租徴収問題について」(『史朋』40号、2007年12月)の補足することとして、蘇州(呉県)・太倉・崑山の他呉江でも清郷工作以前から租賦併徴が実施されていること、租賦併徴に対して地主の反対が相当に大きくそれが1942年からの租賦併徴廃止の一要因となったこと等の幾つかの知見を得た。成果の一部は台湾の中央研究院近代研究所の学術討論会で「従資料看戦争与近代江南的地主制度」(2008年10月8日)として報告を行った。
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