本研究計画は、1937年から1949年までの日中戦争時期から国共内戦時期の中国江南地域の地主-小作関係を中心とする農村社会経済の実態と変化を、新たにマイクロフィルム化された地方新聞や日本・中国等の諸機関が行った実態調査報告書等の文献資料と、日本及び中国・台湾・米国に収蔵されている文書史料の分析を通じて考察しようとするものである。平成21年度は『松江日報』等のマイクロフィルムを購入すると共に、前年度に購入した『常熟日報』、『江蘇日報』等の日中戦争時期の蘇州等江南地方の新聞のマイクロフィルムを閲覧し、必要な史料を収集した。資料調査では国外は北京の国家図書館を訪問し『清郷旬報』等の清郷工作時期の資料を中心に調査・収集した。国内では日中戦争時期の米穀を中心とする農産物の集配を中心に資料を調査し、国会図書館、東京大学東洋文化研究所、東京大学経済学部、防衛研究所、京都大学、大阪大学、大阪市立大学を訪問した。資料の分析では、租糧併徴が廃止された1942年度以降の収租状況を中心に考察し、特に1944年の田賦実物徴収において、租桟地主の場合、租米と田賦が一体として徴収されていたとの知見を得た。またマイクロフィルムの江南地方新聞資料と呉江市档案館所蔵の「佃戸調査冊」を分析して、「日中戦争期の呉江県の土地関係簿冊について-呉江県第二区釵金郷・東溪鎮・清水郷の「佃戸調査冊」-」という論文を『北海道教育大学紀要』第61巻第1号に投稿し、2010年9月発行予定である。他の分析結果も報告書或いは論文として公刊予定である。
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