■平成21年度は、フラン中東部に位置するコート・ドール(Cote-d'Or)県(ブルゴーニュ地方)文書館において、研究テーマである「近代フランス地方行政システムの実質的制度化プロセス」に即して、5週間の資料調査を実施した。調査の対象は、同文書館における分類系列M(一般行政)、N(会計、県議会、郡議会)、T(教育)、Z(郡庁)のうち、第二帝制(1852年~1870年)にかかわるものをカバーする合計約250箱(資料の単位)である。この資料調査から、当該テーマに関連する資料・約3万ページ分が得られた。これら資料を分析することにより、当該時期の同県における土地制度の特徴と、地方行政システムの実質的制度化のありかたを明らかにする作業を進めた。 ■その過程において、これまで指摘されてこなかった当該時期の地方行政システムの特徴たる(1)専門家からなる諮問機関の設立、(2)行政職である市町村長の「政治家」化、にっいて、昨年調査したイル・エ・ヴィレヌ県との異同を見出しえた。このうち相違点については、具体的には、(1)専門家としての初等教師(instituteur)の能力に対する期待が強くみられること、(2)市町村長・助役と市町村議会の対立がしばしばみられること、が挙げられる。 ■今後の課題は、(1)フランス南部に位置するエロー(Herault)県について資料調査を実施すること、(2)今年度明らかになった2県の異同を念頭に置きつつ、土地制度の特徴と、地方行政システムの実質的制度化のありかたの関係について論理整合的な説明を与えること、(3)そこで得られた説明を検証すること、である。
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