[具体的内容]フリースタンディング・カンパニー論争の発端であるM. Wilkinsによる問題提起に対して、広く研究者の間から議論が起こった。そのような関心の広がりは、一方ではその問題提起の重要性によるものであるが、他方では、Wilkinsの議論が十分な実証的裏づけを伴わないままの一般的概念化であったことによる。つまり、Wilkinsは重要な問題提起をしたが、欠陥も持っていた。欠陥を補正してより正確な概念を作り上げるためのキーポイントは実証的裏づけにある。 平成20年度研究計画の第1課題の遂行 : したがって、フリースタンディング・カンパニーおよび多国籍企業に関する文献・資料を収集し、研究の基盤となる基本情報の収集・入力・整理を重点的に行った。あわせて、具体的な実証的検討のための経営史関連資料の収集もおこない、本研究の論点に結びつく事実関係発見のための情報源とした。 [意義・重要性]以上のような文献・資料等の情報収集と整理・分析の結果、得られた成果の意義・重要性は、以下のような新たな知見の提供である(平成20年度研究計画の第2課題の遂行) : すなわち、私自身のこれまでの研究によって導き出された仮説(=イギリス貿易商社の発展パターンには、2類型があるという仮説)とフリースタンディング・カンパニー論との間に重要な接合点を見出したことである。その接合点とは、貿易商社がフリースタンディング・カンパニーと強力な関係を保持することを可能にした要因である。強力な関係を保持できたのは、多国籍多角化型貿易商社であり、このタイプの貿易商社はこの要因を保有していたと考えられる。
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