平成2Z年度の研究実施計画3点を次のとおり実施した:(1)論文の作成と公表:3本の論文を作成・公表した。猿渡啓子「フリースタンディング・カンパニー論-英領マラヤのゴム栽培会社を中心に」(研究年報『経済学』(東北大学)、掲載確定);同「フリースタンディング・カンパニーのクラスター形成の契機-英領マラヤにおけるゴム栽培会社の発起と証券引受」(研究年報『経済学』(東北大学)、掲載確定);同「フリースタンディング・カンパニーのクラスターにおける資金的資源の取引-イギリス商社とゴム栽培会社のクラスターの事例」(研究年報『経済学』(東北大学)、掲載確定);(2)フリースタンディング・カンパニーと商社の関係について、フリースタンディング・カンパニーの概念提示者のM.Wilkinsによる既存研究の弱点を明確にし、本研究独自の見解を出す:1本目の論文(上言己論文の列記順)は、英領マラヤのゴム栽培会社の事例を取り上げ、M.Wilkinsの主張するフリースタンディング・カンパニーの概念を検証し、概念を修正・精微化した。2本目の論文は、第1次大戦前におけるフリースタンディング・カンパニーのクラスター形成は、情報収集能力、企業者精神、資金調達能力、の一部あるいはすべてをもった機関(投資信託会社、銀行、イギリス商社)が、ゴム栽培会社への直接投資の仲介者となる企業者機会を掴み取り、会社発起の引受けを契機とし、会社設立後、その機関が経営管理能力を提供できた場合に、クラスターが形成されたと主張した。3本目の論文は、イギリス商社とゴム栽培会社とで構成されたクラスター内部の資金的資源の取引を取り上げ、プロトタイプのアメリカ多国籍企業との比較において検討し、その取引の性質は、いわゆる系列閲係にある企業間取引に類似した取引関係であっと主張した。(3)本研究に関連する文献・資料の収集:本研究関連の文献・資料を収集した。
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