19世紀ドイツにおける中小産業経営の発展とそれを支えた制度的基盤の解明をめざし、そのために1840年代以後南ドイツ諸邦で展開された産業振興政策に注目して、これら政策の成立背景と意図及び政策の内実を、現実の中小産業経営の展開を踏まえ明らかにする. 具体的には以下の検討課題に即して研究を進める。 (1)バーデン小営業政策の歴史的起源をなした時計産業振興策に着目し、政策意図と背景、時計工の存在形態を明らかにする。 (2)ビュルテンベルクで展開されたアメリカ式互換性部品技術の導入を梃子とした時計産業振興策の意図と背景、政策的内実を明らかにする。 (3)ビュルテンベルクで展開された巡回講習会の内実と講習会に参加した生産者の存在形態を明らかにする。 (4)ビュルテンベルクの産業振興政策の代表部「工商業本部」を長年指導したシュタインバイスの政策実践とそれを支える経済政策思想に着目し、これを同時代の主要な経済・社会政策思想(経済的自由主義、中間層保護論、工場制工業推進論)のなかに位置づけ、シュタインバイスの思想的特徴を明らかにする。
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