前研究課題「『水利共同体』からみた現代中国農村における国家と地域社会」の継続的研究として、「水利共同体」に焦点を絞りながら、戦前期の日本の研究機関による華北での農村実態調査を整理し、解題を付した目録を作成し、さらに1950年代の中国で推進された「農業の集団化」に関する先行研究を、東洋文庫等で収集した。 前課題の研究方法と史料の存在状況を踏まえて、研究対象地域を華北地域でも山西省に限定し、その地方志から、1950年代から現代に至る水利灌漑システムに関するデータを抽出した。 満鉄調査部を中心とする、戦前期の日本側調査機関による華北農村調査において、水利灌漑システムの検討対象とされた農村が所属した、山西省太原市近郊及び遠郊、さらに山西省臨汾市遠郊の山間部農村も加えて、当該地の水利灌漑システムの歴史的変遷状況を中心に、水利監督部門および利用者農民等の関係者へのインタビューを含めて関連資料を収集した。 2008年12月の中国での現地調査では、太原市近郊農村である黄陵村と小店村、及び遠郊農村である赤橋村、平遥市道備村、さらに四社五村といわれる霍州市・洪洞県境の山間部地域農村である義旺村、橋西村、橋東村等における水利の現状を当初の計画通り調査し、関連資料を収集した。
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