研究概要 |
1試験研究機関・学協会設置年データベースにもとづく分析 前年度に作成した試験研究機関・学協会設置年のデータベースをもとに,官公私立別,分野別,地域別の設置動向についての分析をさらに進めた。その結果,以下のことを明らかにした。日本における試験研究機関の設置は第一次大戦期を画期として本格化するという通説があるが,これは必ずしも正しくないこと,それ以前に官立の機関や公立の農業分野の試験研究機関が広範に設置されていたこと,日本では官立→公立→私立,基礎科学→農林水産→鉱工業の順に試験研究機関の設置が進んでいったこと,などである。また,学協会については,設置のピークが試験研究機関よりも遅く,1920年代後半であり,その設立には試験研究機関とは別の要因があったと考えられること,とくに医学関係の学協会が多かったが,これは医学分野の私立専門学校卒業者数が他の自然科学分野に比べて突出して多かったことが関係していることがわかった。このことから,高等教育機関の卒業者数と試験研究機関,学協会の設置件数との相関が重要なポイントであることがわかった。 2明治後期から昭和初期にかけての産官学協同の世論形成過程の調査研究 『東洋学芸雑誌』や『工学会誌』など,戦前の科学技術界の世論形成に重要な役割を果たしたと思われる雑誌,記事等を調査し,関連する資料を収集するとともに,その記事内容をもとに,世論形成から政策実現へのプロセスを分析した。その結果,世論形成に大きな影響を与える要因として,日本の研究者の第1~2世代ともいうべき帝大教授たちの存在が浮かび上がった。また,軍の世論の動向を見るために,『偕行社記事』『水交社記事』の科学技術関係の記事を収集した。
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