研究概要 |
前年度までに行った試験研究機関・学協会設置年のデータ分析から,自然科学系高等教育機関の卒業者数(年間及び累計)が試験研究機関,学協会の設置件数に影響を与える重要な要因であることが明らかになったため,明治初期の1875年度から1940年度までの自然科学系高等教育機関の卒業者数の実態把握と分析を行った。 使用する主なデータは『文部省年報』であり,同資料に基づき,自然科学系の高等教育機関の卒業者数を,大学・専門学校別,学問分野別(理学・工学・医学・農学),設置者別(官公私立)に集計し,データベースを作成した。卒業者総数は内地で283,357名である。そして,それに基づいて,卒業者の実数把握とその時系列の変化を見た。 その結果,1920年代後半に全体の卒業者数が急増しており,その時代が戦前の高等教育機関の制度化にとって画期であったことがわかった。このことは学協会の設立件数のピークが1920年代後半であったとする昨年度の研究結果とも一致する。そして,その傾向は大学・専門学校別,分野別,設置者別に見てもあまり変わらなかった。また,明治初年を除いそ,専門学校の方が大学よりも一貫して卒業者数が多く,その差は1940年度にいたるまであまり縮小しなかったこと,分野別では医学と工学分野の卒業者が多く,両分野で全体の8割近くを占めていたこと,設置者別では官立機関の割合が大きく,かつ一貫して増加傾向にあったことなどが明らかになった。これらの事実の中には断片的に指摘されてきたものもあるが,統計的に確認されたのは初めてである。
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