平成21年度は、前年に引き続いて国際連盟の貿易統計からのデータ抽出と東アジアの貿易統計の収集、およびそれらのコンピュータ入力作業を集中的に行った。国際連盟のInternational Trade Statistics中から、データのそろっている1924年から1938年について約20ヵ国の輸出入を選択した。アジアについては、すでに申請者が集めている統計を、さらに補充する収集活動をおこなった。とくに、平成22年3月に米国へ資料調査旅行をおこない、米国公文書館において従来知られていなかった李氏朝鮮末期の海関による統計書Returns of Trade and Trade Reportsを発見することができた。それを手がかりに、米国英国等、アジアと早くから関わりを持っていた国々の図書館、研究所について、インターネットで新たに貿易統計の所在調査を進めつつある。これら収集した統計資料を、アルバイターによって、入力して電子形態化しデータベースの構築を進めている。現在の入力データ数は約110万である。そうして、これらのデータに国際連合の貿易分類SITC5桁と同産業分類BEC3桁によって、商品別コードを振る作業を進めている。今年は、この膨大な基礎的作業に費やした。 まだ分析は初期段階であるが、以下の点は明らかになりつつある。第1は、東アジアの特異性である。現在まで整理した20ヵ国の中で、日本と周辺アジア地域の貿易の伸びは傑出しており、他の地域においては類例がまったくない。第2に、アジアのなかでもインドと中国は、1920年代までは貿易の着実な発展が見られるが、その後はむしろ縮小している。第3に、世界貿易全体の地域的な偏りが、両大戦間期から急速に進みつつある。これらの事実を踏まえ、引き続き分析作業を進めていく。
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