今日まで資本主義世界の構造を明らかにしようとした研究は、世界中心からの資本主義の波及と覇権国家英国・米国の統合システムに焦点を当て、欧米以外の国家社会はそれに包摂されるとしており、近代世界はヨーロッパ資本主義の一方的な拡大過程としか把握されていない。しかし、実際には20世紀に、世界市場に被動的に組み込まれた国家社会のなかから、主体的に資本主義を構築する動きがでいた。それらの動きには、もっぱら自国内市場に依拠するものと、逆に世界市場を対象として工業化を進めるパターンがある。また、その資本源泉として、主に自国内資本が中心となる場合と、ほとんどを外国資本に依存するケースがある。実際には最初の資本主義である英国を除いて、その他の資本主義はすべてこれらのパターンの組み合わせによって、幾つかの累計に集約されることになる。 本研究では、19世紀半ば資本主義が真に世界を包摂した時点から、米国ドルの弱体化と第一次オイルショックによって世界経済が新しい段階に入った1970年までの1世紀について、世界各国・地域における資本主義形成のされ方を、貿易統計の分析を通じて明らかにしようとしている。そのために、まず各国の貿易統計を網羅的に収集整理し大規模な世界貿易データベースを構築した。そして、時期ごとに貿易品の構成とその増減趨勢を基準として、この世界貿易データベースを総合的に分析することによって、世界各地域・国家の資本主義化の類型を析出しその相互関係を明らかにしている。
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