本研究の目的は、日本における三世、または四世の華僑華人ビジネスの最前線から、インタヴュー調査を行い、それを基礎に華僑華人ネットワークの機能とその役割について検討することである。それゆえ、今年度も旅費と謝金に費用の多くを配分した。本研究では、華僑華人のネットワークの伸張は、取引コストを切り下げる制度からも検討される必要があると考えている。この場合、制度とは「人間がお互いにかかわりあうときの不安定さを軽減するために考案された構造」であり、それは法律のような公式的な制度や、「規範や慣習」のような非公式的な制度から構成される。華僑華人が多く居住する地域では、「支配者と社会構成員が双方の利益に見合うような妥協」に至り、取引コストを切り下げた。そうであるとすれば、華僑華人の移住先の支配者も、華僑華人の社会的関与における「不安定さを軽減する」ことを用意したといえる。そうした社会のなかで、ネットワークは、商会などの組織を構築しながら伸張したのである。それでは、本研究の対象とする、近代日本のなかで、華僑華人らはいかに公式と非公式の制度を構築したのであろうか。ネットワークを制度としてとらえ、華僑華人からの聞き取り調査を通して、検討している。本研究は、連携者との緊密な共同研究を目指し、その成果を社会に還元したいと考え、平成20年9月に神戸華僑華人研究会と共催して、「アジア・ネットワークの制度と生存基盤」というセミナーを開催した。
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