本研究は、近江商人の特質となる雇用形態を日本的雇用慣行と関連づけて研究することにあり、地域・業種・時代などを異にする近江商人の雇用形態を具体的に分析することにあった。 そこで、平成21年度は、前年度に続き日野町史編さん室と栃木県立文書館に所蔵されている吉村儀兵衛家文書の関係史料の写真撮影を追加発見分も含めて行った。また、広島大学図書館と福島県歴史資料館に所蔵されている内池家文書の写真撮影を実施した。さらに、東京都立中央図書館や関係する各地の図書館などに所蔵されている地方自治体史の近江商人関係部分のコピーをしたり、そこで必要な情報を得たりした。 このように、平成21年度も、近江商人の史料調査を幅広く行い、史料の所在・内容を把握することに重点を置いた。現在、これらの撮影した史料の整理、解読を行い、分析を始めつつある。 さらに、近江商人の吉村儀兵衛家に関する論文「近江商人吉村儀兵衛家と酒造業」「近江商人吉村儀兵衛家の雇用形態」を公刊し、現在「近江商人吉村儀兵衛家の経営-本店を中心に-」と「近江商人吉村儀兵家の出店経営」の論文をまとめつつある。そこでは、具体的な酒造業を営む近江商人の雇用のあり方やその経営などが明らかになってきた。
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