平成21年度では、第一に産別労働組合リーダー2名のオーラルヒストリーを実施し、1名に関しては報告書を刊行し、もう一名に関しては減殺編集中である。産別労働組合が企業の労使関係に果たした具体的役割を検証しつつ、分析を開始している。 また、労働組合と企業人事の文章資料とオーラルヒストリーを使って、経営合理化や労働協約締結、さらに新人事制度導入に対して労使がどのような交渉をしたのかを検討した。日本型の労使関係の源流を探る試みになっている。 さらに、3種類の労働組合対象のアンケート調査データを分析し、数本の論文を作成した。「交渉内容別に見た労使協議制度の運用とその効果-「問題探索型」労使協議の分析-」(日本労働研究雑誌)を発表し、他は日本労務学会で発表をした。現在は発表論文を投稿に向けて改良中である。現時点の労使協議制度や苦情処理制度のなどの「制度化」された労使関係が、どの程度機能しているか、また限界がどこにあるのかを検証している。現在、労使交渉案件の「個別化」に伴い、従来の労使交渉ツールでは対応できていない事例が生まれていることを確認し、その改善策として新たな「制度化」を進めている企業労使が一部あることが確認された。 なお、そもそも中小企業においては、企業別労働組合では対処できない交渉案件も多く、産別労働組合の役割が期待されているが、「組織化と労働条件決定における産別労働組合の役割」「法政大学キャリアデザイン学部紀要」で明らかにしたように、産別労働組合の支援にも限界があることを確認されている。 以上、平成21年度の研究成果をふまえて、個別に分析を進めてきた産業別労働組合と企業別労働組合の連携実態の分析が22年度の目的となる。
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