近江商人松居久左衛門家の蓄積と理念(同志社大学『経済学論叢』61巻3号査読無2010年pp.1-38):松居久左衛門家は、江戸後期の近江商人を代表する商家である。この論文では、松居久左衛門家の、江戸期から明治期にいたる150年間の松居家の純資産蓄積の過程を明らかにした。その最盛期は、受継いだ資産を10倍に増加させて、松居家に隆盛をもたらした三代目松居遊見の代であった。遊見は、自分のみの富裕を望んだのではなく、商機を郷里の人々と共有しようとした。その考え方は、彼の信仰する仏教の教えに基づくものであった。この遊見の考え方は、自家に富をもたらしただけでなく、商人を目指す多くの後輩を育てることに結果し、地域社会へ貢献するものとなった。 近江商人野田六左衛門家の系譜と蓄積過程(同志社大学『経済学論叢』62巻4号査読無2011年pp.1-58):近江商人野田六左衛門家は、1753年に酒造業とよろず卸し小売商を北関東の板鼻で開店した。四代目は放蕩のため当主の座を追われた。五代目以後は、分家を設けて経営陣を強化し、業績は回復した。また、従業員にも利益の一部を賞与として与えることによって、長期勤続の忠良な奉公人に恵まれた。経営陣の強化と良質な従業員という二つの経営要素があいまって、近代につづく野田六左衛門家の経営を支えたのである。
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