20年度は、知的財産部門、革新的製造企業に関する実証研究を実施した。 第1に、日本知的財産協会の協力を得て、企業における知的財産部門に勤務する社員113名(社会人経験10年以上、知財部経験3年以上)に対する質問紙調査を実施し、マネジャータイプ人材とスペシャリストタイプ人材の経験学習の違いを分析した。分析の結果、マネジャータイプ人材は、スペシャリストタイプ人材に比べて、初期(社会人1-5年目)から知財戦略の立案や部門の変革にかかわっていること、中期(社会人6-10年目)には、海外経験を積むことで視野を広げ、コミュニケーション能力を高めていること、後期(社会人10年目以降)には、知財戦略や部門変革に本格的にかかわることで経営感覚を養っていることが明らかになった。この結果は、知財部門における学習を促進するためには、将来のキャリアに応じて経験の積ませ方を計画的にマネジメントすることが重要になることを示唆するものである。 第2に、優れた研究開発能力を持つ革新的企業A社の提案制度に関する事例研究を実施した。インタビュー調査を実施し、A社における提案制度の進化プロセスを分析したところ、A社では、コンサルタント主導の改革の失敗を受けて、企業理念を重視したトップ主導の提案制度へと変革することで、制度を進化させていた。このとき、提案制度を管理する専門部門のミドルマネジャーが、現場を重視する姿勢を持ちながらコンサルティングを実施し、現場を支援することが重要になることが明らかになった。
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