21年度は、教育、知的財産、医療分野のプロフェッショナル、あよびプロフェッショナル組織に関する研究を実施した。第1に、これまでの教師の熟達に関する先行研究をレビューした。その結果、教師は、「優れた先輩教師、学内の研究活動、思うように動かない生徒」に関する経験を通して、「個性化した、授業を想定した知識スキル」を獲得し、「共同作成・自律支援、生徒の学び中心」の信念を持つようになることが明らかになった。 第2に、知的財産協会の事例を組織学習論および実践コミュニティの観点から分析した。知的財産協会は、非営利・非政府の方針を貫き、高い志と自由なコミュニケーション風土基盤として、優れた実践的知識を獲得・共有・棄却するしくやを構築していた。 第3に、国立大学病院における救急救命医7名に対して、経験学習に関するインタビュー調査を実施した。その結果、救急救命医に求められる能力、熟達を促進する経験、医師の熟達を促す条件が明らかになった。 第4に、職場の学習を促している看護師15名に対してインタビュー調査を実施した。その結果職場の学習を促す師長のリーダーシップ活動の次元として「発言風土」「承認」「自律支援」「役割」「勉強会」「業務改善」「インシデント対応」「チーム支援」『新人サポート」「目標設定」「キャリア相談」「権限委譲」「情報共有化」が抽出された。 第5に、済生熊本病院の事例研究を実施した。その結果、医療の質と経営効率を両立するマネジメントのあり方を、事務部門組織、経営計画、バランススコアカード、業務改善の観から明らかにすることができた。 以上の成果は、これまで検討されてこなかったプロフェッショナルの学習プロセスを解明するとともに、プロフェッショナルが熟達することを支援する組織のあり方についての理論構築に貢献するものである。
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