本研究の目的は、ソフトウェア工学分野で過去に研究開発され提唱されてきたさまざまな開発技法 ・管理手法が、地方に所在するソフトウェア開発企業においてどの程度普及し、その普及がソフトウェアの開発生産性や企業のパフォーマンスにいかなる影響を与えているかを明らかにすることである。そのために当該年度においては、 1.過去に論及されてきた地方ソフトウェア企業の生産管理や開発方法に関する研究について収集・整理し、それぞれの特徴を整理した。 2.対象地域(静岡県全域)のソフトウェア開発企業の経営者・プロジェクト管理者を対象とするアンケート調査をそれぞれ実施した。回答数は経営者が116、プロジェクト管理者が122であった。このアンケートによって、ソフトウェア開発に従事するうえでソフトウェア工学で研究・提唱されてきた各種の工学的技法・手法がどのくらい認知され、また、実際の開発プロジェクトにおいて導入、適用されているか、その実態を把握することができた。相対的に下流工程ではツールや開発方法の導入が進んでいるものの、上流工程、とりわけ要求仕様策定段階では導入、効果ともに課題があることが明らかとなった。これらの集計結果は、雑誌論文として公表するとともに、回答各企業に送付し、コメントをもらった。さらに、アンケート結果について他の研究者からのレビューを受けた。 3.次年度の研究の準備として、個別のソフトウェア開発企業を対象としたヒアリング、事例研究となる企業の選定を行った。
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